2020年遺言書のルールが大きく変わります。
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遺言書は何かとハードルが高くてなかなか一歩目を踏み出せなかった方も多いのではないでしょうか。
相続の仕方や決まりについて定めた、民法を中心とする法律が約40年ぶりに大きく改正されました。
残された配偶者の高齢化や介護に貢献する長男の妻などの増加、パソコンの普及といった現代社会の変化に対応した改正です。何がどう変わったのか見ていきましょう。
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自筆遺言書がつくりやすくなった
自筆遺言書は手軽に作れるイメージがありますが、正しい手順を踏まないと法的効力を失うほか、2019年1月の法改正以前では財産目録も含め全文自書する必要がありました。
2019年の法改正により、パソコンで目録を作成したり、通帳のコピーを添付したりと自書によらない財産目録を添付することが認められました。
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自筆証書遺言を法務局で保管してもらえる
自筆遺言書は自分で保管する場合、紛失などのリスクがありますが、2020年7月10日以降は法務大臣の指定する法務局で保管してもらうことができるようになりました。
自筆遺言書を自分で保管する際は、開封前に家庭裁判所の検認が必要ですが、法務局で保管する場合は、検認手続は不要となります。
今まで、検認が不要な遺言書とするには、公証役場でしか保管ができませんでした。ただ、それには専門家への報酬や、証人2人以上の立合いが必要などの負担がありました。
検認不要のメリットは?
検認とは、遺言書の改ざんや紛失・破棄などを防ぐことを目的とした、「遺言書の状態や内容を確認し保存する手続き」ですので、遺言書が有効か無効かを判断する手続きではありません。
また、遺言書の検認には、およそ1ヶ月以上の期間がかかります。が、その間は遺言書の内容が明らかにならないため、相続の手続きをすることはできません。一方、検認に時間がかかったことを理由に、相続放棄などの相続方法の申述期限(3か月)や相続税の申告期限(10か月)などが延長されることはありません。
よって、相続手続きの期間短縮とトラブルを未然に防ぐためには、「法的効力のある遺言書を検閲不要な状態で保管すること」が、非常に効果的です。
のこされた配偶者の権利が拡充される
自宅の相続について、所有権とは別に2020年4月に「配偶者居住権」が新設されました。これまで、遺産のほとんどが不動産の場合、自宅を相続した妻は預貯金をもらえないということがよくありましたが、配偶者の自宅に住み続ける権利を守りつつ、遺産分割協議を円滑にすることをできるようになったため、預貯金などの財産も相続できるケースが増えることが予想されます。
相続人以外の貢献も認められるように
今までは長男の妻など相続人でない親族が被相続人を献身的に介護しても、遺言がない限り貢献に対する報酬などは遺産分割の際には考慮されませんでした。しかし法改正により、このような不公平を解消するために貢献した分を「特別付与分」として相続人に対し金銭の請求をすることができるようになりました。どれだけ貢献したか証明する必要があるため、遺言書でどれだけの遺産を分けるか書いてあげることが望ましいとされています。
遺産分割前でも預貯金を引き出せるように
故人名義の預貯金は、遺産分割が終了するまでの間は引き出すことができなかったため、葬儀代などの負担が生じていました。法改正により一定金額であれば、家庭裁判所の判断もなしに預貯金が引き出せるようになりました。
遺言は自分が死亡したときに財産をどのように分けるかなど、自己の最終意思を明らかにするものです。
遺言がないと相続人に対して財産が承継されることになりますが、遺言により日頃からお世話になった方に一定の財産を与える旨を書いていれば、相続人以外の親族の方に対しても財産を取得させることができます。
日本は遺言の作成率が諸外国に比べ低いといわれておりますが、今回の改正により自筆証書遺言の方式が緩和され、法務局で保管制度が設けられたことにより、自筆証書遺言が使いやすくなりました。
ただし、法務局では保管前に遺言書をチェックされますが、これは指名や日付の記載など形式面での漏れがないかどうかをチェックするだけで、法的に問題があるかどうかまではチェックされません。また、遺言を法務局でしている事実を家族に伝えないと、気づかれないまま相続手続きがなされてしまう可能性もあります。
遺言には自筆証書遺言の他、公正証書遺言もありますが、作られる方のニーズに応じて使い分けてくださいね。