Sakairi坂入 幸浩
都市工学専攻 修了
2003年入社
アセット戦略部
アセットマネジメントグループ
分譲マンションと戸建ての販売と用地仕入れ業務を経験。 仕入れのための情報収集や開発コストの感覚を磨き、2013年よりアセットマネジメントグループに在籍している。
生まれ変わる、オフィスビル。
次の歴史を創りだす。
総合不動産会社である小田急不動産。 住まいに関わることだけでなく、自社で保有する賃貸物件を運営し収益を上げることも重要なビジネスである。 その中には、築年数を経た物件も少なからずあるため、今後、売却や建て替えの必要性が増すことが予想される。 自社物件の建て替え──これはまさにディベロッパーとしての腕の見せ所だ。 その第一号となる案件が、超高層ビルが多数集積するビジネスエリア新宿で行われようとしていた。
都市工学専攻 修了
2003年入社
アセット戦略部
アセットマネジメントグループ
分譲マンションと戸建ての販売と用地仕入れ業務を経験。 仕入れのための情報収集や開発コストの感覚を磨き、2013年よりアセットマネジメントグループに在籍している。
工学部建築工学科 卒
2008年入社
賃貸事業本部 賃貸開発部
施設開発グループ
大学で建築を学んだ経験を活かして、入社後は保有賃貸物件の維持・更新計画の作成やリニューアル工事の実施を担当。 その後プロパティマネジメント業務を経験して2016年から現職。
入念な仮説と検証。
将来に関わる重要な決断。
小田急不動産は、新宿駅の徒歩圏に築40年を超えるオフィスビルを保有している。 会社にとっては、長年にわたり運用してきた功労物件の一つだ。 しかし、ビジネスの電子化・IT化が進む以前に建てられたビルであるため、オフィスのOA化への対応をはじめとした、利便性や快適性の面で、物件としての競争力は衰えてきた。 近代化する周辺ビルの存在感に埋もれて、近年は空き室も増えてきたのだ。
「売却か、建て替えか、何らかの手を打つべき時を迎えていました」
賃貸用不動産の取得や売却、運用計画立案などを担うアセット戦略部アセットマネジメントグループの坂入幸浩はそう振り返る。
「空き室は目立っていましたが、減価償却が進んでいることもあって維持コストが低く、現在のテナント数でも事業部全体の収益に対する貢献度は低くありませんでした。 当然、建て替える場合、工事期間中はテナント収入が入りません。 その間、他の物件の運用益で穴埋めできるのかということに加え、新宿という巨大なマーケットの中心部に位置している物件を売却し、一時的とはいえ大きな利益を確保すべきなのか、それとも建て替えることで長く収益を得るほうがいいのか、さまざまな検討が必要でした」
さらに、物件単体の事情だけでなく、小田急不動産の賃貸事業としての今後を考える必要もあった。 同物件の他にも、築年数が40年を超えるものがあり、今後、保有物件の建て替えニーズが増えていくことは間違いない。 会社として、これまでに賃貸向けオフィスビルを建て替えた実績がないため、このタイミングで建て替えのノウハウを蓄積することには大きな意味があった。 加えて、これまでは収益性の高い既存物件を購入して運用してきたが、建て替えのノウハウを活かせば、自社開発による賃貸用オフィスビルを増やしていくことも可能になる。
「2006年頃から戦略的に賃貸向けの資産を増やしてきたことで、この物件を建て替えている間の収益減による影響は最小限に抑えることができます。 また、新宿というマーケットを広くとらえたとき、売却するよりも保有し続けるほうが、安定的に収益を得られるなどメリットが大きいこともわかりました。 とはいえ、投資規模が数十億円にのぼるだけでなく、当事業部の将来に関わる重要な決断となるため、これらの裏付けとなるデータを緻密に揃え、丁寧な説明を加えながらロードマップを会社に示した後、2015年に同ビルの建て替えに向けて動き出すことになりました」
ここからテナントとの退去交渉が開始。 同時に、どのようなビルを建てるべきか、賃貸物件の商品計画を担う施設開発グループによって、具体的なビルのプランニングがスタートした。
直面する一つひとつの課題。
そのすべてが貴重な経験。
新宿オフィスビル建て替えプロジェクトは、プランニング、設計へと工程を進めたわけだが、早くも課題に直面することになった。
当時の背景を、施設開発グループに所属する廣沢景太はこう語る。
「ビルのあるエリアは、区の条例によって、一定規模のビルを建てる場合は上層階に住居を設ける必要があります。 そのため、オフィス用と居住者用の2つのエントランスをつくる必要があるのですが、1階部分は店舗を出店できるスペースを可能な限り広く取り、賃貸収益をあげたいという事情がありました。 加えて、建て替え前は地下にも店舗スペースがあったのですが、本計画ではコスト削減のため既存建物の地下躯体を活かして地下に駐車場を設ける計画としています。 そのため、1階に2つのエントランス、店舗および駐車場入口をレイアウトし、2階から8階がオフィススペースで、9~11階を住居に設定しました」
事前に計算した収益性を確保するため、地上11階地下1階建て、延べ床面積8500㎡というスペースを最大限有効活用すべく、店舗、オフィス、住居の各スペースのバランスをいかに取るかというところから検討を重ねていった。
「さらに、動線の問題も重要です。 1階の店舗には、コンビニエンスストアなどのショップが入ることになりますが、動線の取り方によっては、オフィス用のエントランスを住民が横切って店に向かうことになりかねません。 部屋着などくつろいだ服装で、オフィスのエントランスを通ることはオフィステナントからのクレームに繋がりかねません」
このように次々と出てくる検討課題について、設計事務所やビル営業部のビル管理やテナントリーシングを担う部門、コンストラクション・マネジメント会社との協議を通じてアイデアを借りながらプランを固めている状況だ。
「考えれば、考えるほどにさまざまな課題が出てきます。 ただ、一つひとつをクリアしていく作業によって確実に物件のクオリティが高まっている実感があります。 長年、当社とともに歩んできた物件です。 生まれ変わった後、必ずや今以上の価値を生み出したいと考えています」
しかし、ここへきて近年の建設費の高騰が、「頭を悩ませる」と廣沢は続ける。
「アセットマネジメントグループが算出した想定利回りがあるため、設計変更などによって建設コストの上昇を可能な限り抑える必要があります。 そのため、設計を見直しながら建設コストを算出し、アセットマネジメントグループと連携を取りながら狙った利回りを得られる物件の形を模索していかなければなりません」
現在、基本計画が終わり、基本設計へと進んでいるが、今後も建設市場の価格変動に合わせて、プランニングを変更していく可能性があるという。
しかし、どれほど課題が出てこようとも、「このプロジェクトは必ず成功させる」と坂入と廣沢は口をそろえる。
「当社にとって初の建て替え案件であり、今後の建て替えプロジェクトにその方向性を示す旗艦物件です。 ですから、このプロジェクトは、物件単体としての成功だけでなく、ここで得た知見をノウハウ化し、事業部全体に浸透させるところまで求められているのです」
廣沢はそう力強く結んだ。
※本プロジェクトは、2019年7月に完了。
小田急西新宿O-PLACEとして、新たに生まれ変わりました。
※掲載情報は2018年時点のものです